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プライバシーサンドボックスのテストに関するインサイト 

1月に、GoogleがChromeのトラフィックの1%でサードパーティクッキーを無効にして以来、当社はProtected Audience(PA)とTopicsプライバシーサンドボックスAPIのテストに積極的に取り組んでいます。当社のコミットメントの1つに、当社のテスト結果をお客様とパートナー企業および、Google Chromeと英国競争・市場庁(CMA)に共有することがあります。 

プライバシーサンドボックスが、複合的なソリューションであり、既存のプログラマティック購買行動に大きな変化をもたらすことは明らかです。  

当社のテストにより、数百万ものサンドボックスのインプレッションは、購入・配信可能であることが証明できました。その一方で、対処すべき多くの質問や問題が残されています。例えば、まだアトリビューションや測定に関するデータはありません。今後、パートナー企業と共に評価したいと考えています。サードパーティクッキーの完全な廃止を延期する計画は、業界がテストを継続し、Googleがこれまでに提起された問題に対処するために十分な時間をもたらしました。 

以下は、初期のプライバシーサンドボックステスト期間中に、明らかになった重要なポイントと課題です。

プライバシーサンドボックスの初期テストで分かったこと 

  1. 制限のあるテスト範囲:当社の初期テストには、100社以上のパブリッシャー、何千ものドメイン、10社のDSPが関わりました。これは、Googleの外で実施した最も規模の大きいテストの1つで、必要な費用やオンボーディングに掛かる時間を考えると、パートナー企業のコミットメントの証です。一点強調しておきたいこととして、サンドボックスを有効にしたインプレッションは、テスト結果を把握できる程度のボリュームまで増えましたが、全体のインプレッションと広告収益は未だに限られています。  
  1. 一般的なトピック:当社のエクスチェンジの広告機会で最もよく見られるトピックを含む、Topics APIに関連するデータを収集しています。また、Index Exchangeの管理画面上でこれらのインサイトを共有するための新しいTopicsレポート機能を導入しました。マーケターが入札の通知またはキャンペーンの最適化に役立つトピックであるか、まだ明らかではありませんが、APIのテストを開始した直近のバイヤーのフィードバックは前向きで心強く感じています。 
  1. CPMへの影響:当社のテストを実施して、最も懸念されることとは、サードパーティクッキーを活用したインプレッションと比較し、サンドボックスを有効にしたインプレッションのCPMが33%低下した点です。また、サンドボックスを有効にしたインプレッションのCPMは、サンドボックスとクッキーの両方がないインプレッションと比べて36%低下しています。Sandbox APIが(+3%)役に立った一方で、現在のスケール、利用可能な機能、採用率において十分でなく、パブリッシャーに大きな収益インパクトを与えないレベルにまで達していません。

現在、さまざまな制限では、プライバシーサンドボックスは、一般的には効果的なソリューションではない可能性があります。もしくは、テック企業にとって導入の準備をするにはコスト負担が大きい可能性があります。より簡単で効率良くスケールを拡大するため、また、パブリッシャーとプログラマティック市場全体にとっての重大なリスクに対処する必要があります。 

パブリッシャーの問題と必要な機能

当社のプライバシーサンドボックスのテストで、デザインの改善が必要だということが分かりました。ここで、Google Chromeチームと共有した重要な課題についてお話しします。Chromeチームは、フィードバックを受け付け、業界全体の企業と協働しています。Index Exchangeは、プライバシーサンドボックスが実用的でスケール可能なソリューションになるよう、新しい機能のテストを継続し、不具合に対処していきます。

1. フォーマット、チャネル、取引機能 

サンドボックスが効果的に機能するには、様々な広告フォーマットに対応する必要があります。当社では、Googleが、機能のリクエストに対応するため開発に取り組んでいることを把握しています。また、それが導入された際には、当社でテストしたいと考えています。  

現在、クッキーは動画広告にも多く使われていますが、プライバシーサンドボックスは動画をサポートしていません。Index Exchangeは、インプレッション機会のオークション数を減少させレイテンシーを軽減するため、マルチサイズへの対応に関するリクエストを提言しています。 

モバイル時代に入ってから数年以上経過しています。当社の立場からすると、モバイル環境でのテストは限界があり、Androidでのプライバシーサンドボックスのテストには未だ参加していません。デザインと効果を評価するには、より多くの取引が必要です。

また、サンドボックスの現在のデザインは、ディールに適切なサポートを提供していません。ディールを介したプログラマティック取引が増加しており、サポートの必要性があります。

2. レイテンシー  

レイテンシーは、Mediavine(英語)が以前に報告した通り、深刻な問題となっています。他のオークションと比べて、プライバシーサンドボックスのオークションでは、レイテンシーが28%高いことが分かりました。

レイテンシーの主な原因は、GoogleがProtected AudienceオークションでtopSellerであるためです。オークション実施前に、Google以外の入札はGoogle Ad Manager(GAM)により処理される必要があるからです。全てのオークション参加者も、Googleが最終的な落札者を決定するまで待たなければいけません。

他のパブリッシャーとアドエクスチェンジが、Prebidを介したクライアントサイドのオークションで直接競合できることで、レイテンシーを軽減できる可能性があります。そうすることで、より公平になり、ウェブ取引の速度が大幅に改善されるでしょう。マルチサイズやマルチフォーマットに対応し、世界中へ配信するためURLの処理を最適化することにより、レイテンシーを改善できるかも知れません。

パブリッシャーはレイテンシーをモニタリングし、プライバシーサンドボックスのテストには、このようなリスクがあることを念頭においてください。例えば、トラフィックの少ないページのテストを制限するなど考慮してください。

3. TEEソリューションとクラウド市場の競合

プライバシーを保護するため、プライバシーサンドボックスは、Chromeブラウザを使用するデバイス上または、クラウド上のオークションサーバーサイドの安全に実行できる、信頼できる実行環境(TEE)を介してオークションすることを条件としています。TEEは、ユーザーのデバイスで利用可能以上の処理能力を発揮でき、レイテンシーを軽減します。

その一方で、Googleは、オークションをTEEに移動するため、かなり詳細な技術要件(英語)を作成し、現在はAWSまたはGoogle Cloudプラットフォーム上で動作するTEEのみを許可しています。これが、大手クラウドプロバイダーの収益を上げる一方で、独立系パブリッシャー、エクスチェンジ、その他アドテクプラットフォームに、費用負担が発生し、不公正な競争となる懸念を抱いています。

例えば、Index Exchangeは、自社のクラウドベースTEEを実行し積極的に当社のコストを最適化できると同時に、当社のお客様に高い効率性をもたらします。プライバシーサンドボックスをサポートすることは、オークションのインフラの大部分をパブリッククラウドに移行する必要があり、当社のお客様やパートナー企業には大きなコストが発生します。 

4. パブリッシャーが管理するオーディエンス

現在、メディア企業とDSPのみが、PA APIが構築した一般的なオーディエンスフグループ「インタレストグループ」を作成できます。これが可能性のある活用事例を制限し、パブリッシャーが自社のオーディエンスを効果的に収益化するのを妨げています。もしパブリッシャーが提供されたオーディエンスをキュレーションしようとすると、利用している各DSPにオーディエンスの情報を提供しなければなりません。 

当社は、パブリッシャーがよりコントロールでき、セルサイドのパートナー企業にインタレストグループを提供でき、パートナー企業はディールIDを通じて1つまたは複数のDSPに一度にインタレストグループを提供可能なサンドボックスを設計したいと提案しています。 

5. 関連するクッキーレスの計画 

当社では、IPアドレス規制のようなサンドボックスに関連する計画についても懸念を抱いています。これらの取り組みは、クッキーの代替にはなりませんが、コンプライアンスの遵守につながります。例えば、現在、クッキーレスのブラウザでIPアドレスを規制する方法では、ユーザーの地理的な地域や州を判断するのは難しく、現地のプライバシー規制に従うのはさらに困難です。

今後について 

プログラマティックとオープンウェブのエコシステム全体で、数ヶ月間に、このような重要なソリューションをテストするために協力する企業の数が増えているのを見て、嬉しく思います。 

プライバシーサンドボックスは、複雑で今までのプログラマティック取引の方法とは大きく異なります。完璧ではないかも知れませんが、他の代替策や全く対策がないよりは希望があります。当社では、何百ものインプレッションを配信できることを証明しましたが、すべての側面をテストできた訳ではなく、これからもインフラの構築に取り組む必要があります。Google、CMA(英国の競争・市場庁)やその他関係者が、テストのフィードバックを取り入れ、現在のデザインを改善し、オーブンウェブ全体でクッキー廃止後のアドレッサビリティの対処に貢献することを願っています。また、テストの実施と採用がさらに進むように、バイサイドからの参加が増えることを期待しています。 

クッキー廃止が延期されたことで、準備に必要な時間がもたらされました。当社は、引き続きプライバシーサンドボックスをサポート、テストし、最新情報や新たな発見をお伝えします。テストに関するご質問や参加をご希望の場合は、プライバシーサンドボックス部門に、お気軽にお問い合わせください。

詳細は、Googleプライバシーサンドボックスと利用開始方法について、APIに関するIndex Explains動画Protected Audienceデモ(英語)、テクニカル・ダイアグラム(英語)をご確認ください。  

Index Exchange Product Team

Index Exchange Product Team

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